なぜ日本が「世界一の音楽市場」になってしまったのか
・世界一音楽が売れる国が、世界一音楽を聴いている国ではない、という事実

先日、2011年の年間レコード生産実績が日本レコード協会から発表されました。これによって、日本の音楽業界は初めてアメリカを抜いて「世界一CDが売れている音楽市場」となる事がほぼ確定しました。


このニュースを聞いて「日本の音楽業界ってそんなに好調?」と思う人もいるかもしれません。この数字は、むしろアメリカの音楽業界がいま変化の真っ只中にある、ということなんです。というのも、今回順位が逆転した原因は、日本とアメリカの「音楽配信」市場の規模の差にあるからです。

現在、日本では音楽市場全体に占めるCDの売上が75%を占めているのに対し、アメリカは既に40%以下まで減少しています。これはヨーロッパやアジアの国々も同様で、今や世界中で日本だけが「CDばっかり大量に売れる国」になりつつあります。

次に大きな要因となっているのは「価格」。2011年の日本のレコード生産額は2818億円。これを今の円高水準でドルベースに換算すると、36億ドルとかなり大きな金額になるわけです。加えて、CDの価格も、有料配信の価格も日本はアメリカの約3倍(向こうは大体アルバム1枚12ドル前後)なので、日本と同じ金額分CDを売るには相当売れないといけない。

アメリカはもう配信経由で音楽を購入して、楽しむことが当たり前になっており、いわゆるヒット曲は300万~500万ダウンロードくらいの数字を出します。逆に日本は有料配信がまだ根付いていないというか、「着うたフル」という日本独自のコンテンツがあるため、iTunes等でのダウンロードは50万ダウンロードくらいがやっとです。


・沢山の人に聴かれなければ、生き残れない時代になりつつある。


整理してみましょう。アメリカではCDが売れませんが、ダウンロードは数百万という大量のオーダーがあります。音楽配信は一曲あたりの価格が安い(約76円)こともあって、なかなか大きな売上にはなりませんが、その分沢山の人がいろいろなアーティストの曲を気軽に購入して、楽しむ環境があります。これはアメリカ人の音楽との付き合い方にもマッチしています。

一方日本では、AKB48のシングルCDが去年一年でトータル700万枚近く売れました。定価は握手権つきで1600円(!)です。これだけでもものすごい売上額になりますが、決して700万人が購入したり、聴いたりしたわけではありません。

AKBは「やや」特殊な例ですが、基本的にJ-POPは複数タイプのCD販売がいまやどのアーティストも当たり前になっているので、音楽配信のように「ダウンロード数=買った人数」にはなりません。mp3ファイルを複数回ダウンロードする人はいないでしょうし。販売枚数>お金を払って聴いた人の人数、の図式が当たり前になっているのです。

なにが言いたいかというと、

音楽が好きでお金を払って聴いている人はどちらが多いか?
ということ。

僕の周りにも音楽好きな人、沢山います。でも同じくらい、音楽に興味が無い人も一杯います。ちょっと気になるのは「昔は(興味)あったけど、最近ないなー」という人が随分増えたな、ということでしょうか。あるいは「音楽好きだけどお金払うほどじゃないなー」という人も、増えてきているように思います。


・ネットがもたらすのは、どの分野においても「趣味・嗜好の多様性」しかない。


事実として、日本は世界で一番CDが売れている国です。一番儲かっているとも言えます。なんですが、海外、特にアメリカやヨーロッパのアーティストは日本をそれほど重要な市場と見ていません。レディガガやアブリルのような「例外」はともかく、基本的に洋楽は日本で売れないからです。AdeleやKaty Perry、Bruno Marsが果たしてどのくらい日本で知られているでしょうか。

アメリカを抜き去り、日本は世界一大きな音楽市場となった。K-POPやGAGAのように積極的に日本に進出してくる外国のアーティストもいる。まだしばらくは、この感じでいけるのではないか…そう思っている音楽業界の人は結構います。実際いける人はイケるんでしょうが、何かそれでいいのかな?と思うこともあります。

何年か前のblogで「メジャーレコード会社と契約する人は少なくなるなるのでは?」と書きましたが、アメリカに関して言えば今や完全にそうなってしまいました。去年グラミー賞にノミネートされた半分近くはインディーズのアーティストで、今後もその傾向は進むでしょう。なぜなら、CDショップでCDが売れないならメジャー契約する必要がなくなるから。

ここ2、3年、僕も沢山の仕事をアメリカやヨーロッパの人とやりましたが、実はメジャーのお仕事はほぼありません。めちゃくちゃ有名なミュージシャンやエンジニアとお仕事させて頂いた際も、やはりディストリビュートはインディーでした。それが普通になってきてるし、向こうの人たちはどんどん適応というか、時代に合わせてビジネスを変化させています。

色んな方に会うたびに、聞いてみましょう。「最近、自分の仕事のやりかたは変化してますか?」。自分の扱っている商品が売れなくて…と現状認識しているだけではいけません。今までのやり方ではダメでも、やり方を変化させる事で未来の不安を払拭することは、出来るんです。

僕が感じる違和感、というか危機感は、邦楽と洋楽の音楽性や言葉の違いよりも、この「変化しようとしているか」という姿勢のギャップにあるんじゃないかな、と思います。今回のニュースは「J-POPもまだもう少しこのままで大丈夫」と思わせる可能性があるわけで、そうなるとどんどん取り残されるかもしれない。

一体に何に取り残されるのか、どうすれば取り残されないで済むのか。音楽でサバイブしていこうとするバンドやアーティストからすれば、とっても気になる所ですよね。続きはまた今度書きますが、是非ちょっと考えてみて下さい。


ではまた。
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