ミックス
ミックスについての話だけれど、去年やったとあるミックスの仕事で、僕が「音を変えすぎる」傾向にあることを指摘されたことがあった。

全てのレコーディングを終えて、歌や楽器といった素材(録ったものもあれば、打ち込みのデータもある)がバラバラの状態で僕の所に来る。
それをひとつずつ聞いて、バランスを取りながら、全体としてのまとまりとか聞きやすさとか、とにかく曲をより良い完成形に近づけていくのがミックスという作業だ。
だから前提として…僕が素材を貰ったそのままの状態の時より「良くなってないと」いけない。
そのままだと歌や何かの楽器の音量が大きかったり小さかったり、それぞれがぶつかったり逆に混ざっていなかったりするので、それをバランスしていく。

けどこのバランスをとっていくという作業も、実は自分の趣味や嗜好、この曲はこうあるべきみたいな方向性を含んでしまっている。この方向性が、作り手であるアーティスト本人や作曲家、アレンジャー、あるいはプロデューサーと「ズレて」しまっていると、どんなに自分は頑張って良くしているつもりでも、結果は思わしくないものになる。
貰った素材を原型をとどめないほどに変えてしまう、という所までは僕もやらないけど、少なくとももっと良くしたいとか、カッコよくしたいとか、そう思っている以上は元の素材の状態からはどうしても変わってしまう。
そうじゃないと、わざわざお金を払って僕に依頼する意味がないでしょ?と思ってしまうからだ。

だけど、世の中の全てのミックスがそうではない。
「録った時の状態から、出来るだけ変えないで欲しい」という方向性も当然ある。
レコーディングだって、音色や演奏の状態に細心の注意を払いながら出来るだけ良いもの目指して作業している。
アーティストや曲によっては、録り終えた段階でほぼ完成、という場合もあるだろう。
で、それをほんの少しだけバランス良くしたい。
あるいは、それまで全然楽曲制作に関わってこなかった別の人の感性を取り入れたい、そんな理由で依頼するミックスもある。
そういう風に事前に言ってもらえれば僕も(多分プロのエンジニアなら誰でも)そのようにするけど、そこまではっきりと「変えないで欲しい」と言われるミックス依頼はあまりない。
大抵は「お任せ」と言われる。あるいは「いい感じにしてほしい」とか。笑
そうなってくると、自分の思う「いい感じ」にするべく、お任せで自由に頑張ってしまう。
でもそれだとダメな時もあるんだよね。

どこまで「変えるか」、あるいは「変えないか」。
もっと言うと、自分の考える「いい感じ」に寄り過ぎないよう、常に客観性を持たないといけない。
僕が憧れてリスペクトしているような海外のトップエンジニアは、これとは真逆の人が多い。
つまり、自分のサウンドや完成形をしっかりと持っていて、どんなジャンルや素材が来ようともその人の音にしてしまう。
その人が手掛けて、過去にヒットした〇〇のような完成形ミックスになる。これなら依頼する側も大喜びだ。
でもこれを僕がやってもダメな時がある。もちろん良い時もあるけど。
どちらにも対応できるようにしないといけないのだろうね。
つまり、自分のサウンドも確立しながら、全く正反対のクライアントの意向にも沿える音作り、ミックスが出来ないといけない。
自分が満足するためではなく、アーティストや依頼者が満足する形に仕上げないといけない。
勉強することは常にある。
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