抱きしめたいぬくもり
12月も折り返し地点。今年も残すところあと2週間とちょっと。
先週末を越えて、自分的にはもうかなりひと段落というか、今年の残りはもうゆるゆると過ごそうかな…という感じ。

昨日のblogでもちらっと触れたけど、歌手の平浩二さんが今年五月に発売したシングルCDの、メインではないカップリング曲の歌詞がMr.Childrenの楽曲の歌詞とほぼ同じであった事が判明し、著作権侵害に相当すると判断したレコード会社がシングルCDを回収、公式に謝罪するといった出来事が先週末あった。
このニュース、僕の中ではかなり興味深い話題だったんだけれど、意外と(?)話題にもならず、知らない人もまだまだいるような状況で週明けの今日にはもうほとんど話題にすらなっていない感じだ。
旬が早いね~~情報化社会だね~~。

上記の説明で大体分ってもらえると思うんだけど、要はある曲の歌詞が別の曲の歌詞をそのままパクって使っていた、ということ。それが発売後半年も経ってようやくネット発で発見されて、ちょっとした騒動になった。
歌詞や楽曲の盗用(パクリ)については、昔からいろんな曲が槍玉には上がっているものの、今回発売された「ぬくもり」という楽曲と、元となるミスチルの「抱きしめたい」という曲の歌詞については、もう「似ている」とか「パクっているのでは?」というレベルではなくて、本当に一字一句同じ、という有様だ。これはレコード会社としても、歌手本人としても言い逃れのしようがない。
ちなみに歌手の人の名誉のためにいうと、作詞したのはこの平浩二さん本人ではなく、別の「作詞家」なる人が行っている。つまり、歌っている平さんは「(元の曲を)知らなかった、気がつかなかった」という言い訳が一応成り立つ。平さんは本当にミスチルの元曲を知らずに、作詞家から渡された歌詞をそのまま歌っただけ、ということだ。それもどうかと思うけど(笑)

でもですね、ここからがいわゆるYahooニュースとか報道では書かれていないことなんだけれども。
通常、楽曲を製作してそれをCDにして発売する、しかも自主制作の手売りではなくメジャーのレコード会社の流通を通しての場合、歌っている歌手本人以外にも、相当な数の関係者の「耳」に聞かれて、チェックされているはずなんですよね。
もちろん、今回一番悪いのは「作詞」をした沢久美さんという人。
この人、メインは歌手や歌の先生、あるいは演歌を中心としたイベントの企画制作を行っている人のようで、JASRAC等のデータベースで照会しても「作詞家」と呼べる経歴はほとんどないような人なんだけれども、この人がこんな全く言い逃れ出来ないレベルの盗作をしたことが、最大の原因なのは疑いようがない。
ちなみにこの人も、発売元のレコード会社に呼び出された時は「自分はMr.childrenのこともその元曲のことも全く知らないし、聴いたことがない。だから盗作ではない」と否定したと報道されているけど、それはもう100%あり得ない。だって全ての歌詞とその並び順まで同じだもの。
で、なんでこの沢さんという人が今回こんな事をしてしまったのか。それは本人しか絶対分らない。音楽を作っている人間からすると、思いつく理由や状況が浮かばないのだ。まぁ、どうせ誰にも分らないと思ったのかなぁ~??

で、この作詞家の人が盗作した歌詞を歌手に渡す。歌手の人は元の曲を「知らない」と言っているんだから、本当に知らなかったのだろう。デビュー45周年ということだから、プロの歌手として相当なキャリアを持つ人だ。そんな人がミスチルの有名曲を全く知らない、というのも個人的には相当ダサい(プロ歌手として)と思うけど。でも、平さんは嘘偽りなく本当に知らなかった、と思うことにする。
次はこの曲を製作、レコーディングしなきゃいけないんだけど、まずは作曲家や編曲家がバックのカラオケを作る。CDの音源も確認したけど、全編打ち込みなので、例えば歌詞を渡されずに鼻歌や仮メロディだけで作業したならば、これはこの人たちは盗作を知りようがないので、セーフ。
カラオケが出来上がったら、今度は歌のレコーディング。歌う本人は盗作を知らない。でもレコーディングスタジオのスタッフやエンジニアは??
もし僕が歌録りの現場にいたなら、100%気がつく。「え?これマズくないですか??」
歌詞が書かれた紙を渡されたらレコーディング前に気付くし、渡されなかったとしても最初のAメロ~1コーラス歌った時点で即座に気がつく。
じゃあレコーディングスタジオにいたスタッフは歌レコーディング中に誰も気がつかなかった、あるいは誰一人としてミスチルの「抱きしめたい」を知らなかったのだろうか??
あり得なくはないけど、それって相当にダサい。。。勉強してなさ過ぎ、音楽聴いてなさ過ぎ。でもそれは全然あり得ることだと、他のエンジニアやミュージシャンに聞いてもそういう答えが多かった。ミスチルのファンじゃなきゃ、歌詞が同じかどうか分らないだろう、と。
ならそう仮定して、レコーディングも完了。ミックスして、マスタリングして音源が完成する(この間に誰一人として気がつかないってのがもうあり得ないんだけど…)。
その完成音源を、販売するレコード会社のディレクター、宣伝や営業のスタッフ、平社員から上の上司の人まで、相当な数の人間が少なくとも一度くらいは、聴くはずだ。
僕は以前メジャーのレコード会社で働いていたので、例えば完成済みの音源がCD発売の前にどれだけ膨大な数の人間に聞かれるか、重々承知している。それらのチェックを全てすり抜ける、ということは99.9%あり得ない。
ミスチルのファンじゃなきゃ、いちいち歌詞が同じかどうかなんて分らんよ!という先ほどの言い分は、ここではさらに成り立たないと思うのだ。もし製作ディレクターやレコード会社の偉い人がそんな有様なら、今すぐ仕事をやめた方がいい。音楽やJ-POPに対して知識がなさ過ぎるし、自社で販売する商品に対してチェックが甘すぎる。要するに品質管理を全くしていないということだ。

周りの人に聴くたびに、僕はミスチルのファンなのでそんな風に思うのではないか、と言われる。確かにそうかもしれない。
ファンじゃなければ、歌詞が同じかどうかなんて分るはずがないと。確かにこれが全然別の、僕も聞いた事のないアーティストの歌詞からのパクリだったなら、気がつくはずもない。
ただねぇ、今回はファンじゃなくても知っている人の多い、昔のミスチルの代表曲が元ネタになっているわけです。今もカラオケで散々、本当に散っ々歌われているような曲。ミスチルファンじゃない人にも。(こんな曲が作れるミスチルって、本当にすごいよね)
演歌一筋45年でやってきた平さんはその曲を知らなかった。これはしょうがない。その平さんと共に、演歌を作り続けて来た製作、レコーディングスタッフの人たちも知らなかった。これはまぁ、相当にダサいけどあり得ない話じゃないから、しょうがない。
でも、レコード会社の人間はダメだよ。演歌意外にも、というかむしろJ-POPを主戦力商品として販売し、営利活動しているわけだから。
自社の扱う商品のとんでもない欠陥を、まったく見つけられずにノーチェックで販売しているようなものだ。しかも発売から半年以上経って、ネット経由で匿名の指摘が入るまで、誰も気がつかなかった。
要するに、発売前も、発売後も、何百人といるはずのレコード会社のスタッフは誰一人として自社で販売しているこのCDを聞いていない、ととられても仕方がない。
実は僕が考えている真相はこれで、恐らく今回のCDは歌手の平さんとごく少数の周りの人だけで完パケまで製作されて、その完成したCDをレコード会社は受け取ってカタログに載せているだけ。作るのも、売るのもすべて平さん本人がやっている。
つまり誰もCDを聞いたことがないし、自社から発売しているということをレコード会社の社員が知っていたかどうかすら、怪しい。
そんなバカなと思うかもしれないが、実はよくあることだ。特に演歌や民謡はよっぽどのビッグネームを除いて、ほとんどこれだ。
昔はそれでも、数百人いるスタッフの内の一人くらいは、そのアーティストや楽曲のことを好きで、共に手売りから地道にサポートしていく、というような話もあったんだけれど(そうじゃなきゃ、メジャーリリース出来ないでしょ)、最近はもはや、レコード会社の中に誰一人として存在を知らない(けど自社から出てる)CDというのがあっても、不思議ではない。
なかなか世知辛い話だ。

まぁでもホント、落度はもちろんあるにせよ歌手の平さんは可哀そうだよね。。。
45年もプロ歌手として活動してきて、自分の新発売CDが回収される(そんなに沢山出していないと思うし)というのはきっとツラいと思う。
今年は例のオリンピックエンブレム盗作問題で、この手の話は相当話題になったわけじゃないですか。それでもここまで堂々と(?)パクリをやって、しかもそれが平気で世に出ちゃうわけだから、なんだかな~と思うわけです。
僕自身、パクリは絶対に良くない!人の作品やアイディアを模倣するなんてもってのほか!と思っているわけではないです。
音楽、特にPOPSやロックなんて模倣と、アイディアの拝借なくては絶対成り立たないものですし。
いけないのやコピーやトレース、つまり模倣やカバーではない、そっくりそのまま流用する、というやつですね。
あとやるなら堂々とやる。その意図も明示した上で。いわゆる音楽や楽器演奏でいうところの「完コピ」ってのを僕は否定しないし、ものすごく身になるからむしろやった方がいいと思ってるくらい。
ま、同じ音楽を作ったり歌ったりする身としては大いに気をつけたい所。
ではまた。






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