Third man running(6)
LINDA LOUの楽曲製作では、各段階の"途中経過"がデータとして保存され、CD-Rに焼かれる事になる。だから今も手元に一番最初のデモの段階から、プリプロが加えられて、レコーディングの途中段階からミックス前後、最後にマスタリングした完成形の全段階の音が残っている。こういうのを順番に(時にはシャッフルして)聴いてみるいろんな発見があるんだよね。自分がこの制作期間に何を考え、何を悩み、結局何を掴んだのか…そういうのを繰り返し聞きながら、この文章を書いているよ。


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アルバム用に書き下ろされ用意された曲は、それぞれに個性の違った、今まで以上に(?)バラバラなものだった。この新曲書きの前にアルバム全体の方向性やイメージについて話合いがあったんだけど、そこでケンからみんなに伝えられたのは、


「カッコいい感じのアルバムにしたい」

だった。唖然である(笑)。散々時間かけて悩んでそれかい!と突っ込みたくなるが、逆に言えば彼はサウンドに関してほとんど他のメンバーの事を全面的に信頼して、特にあれこれ注文を出す事はなかった。その代りではないが、自分の作った曲と歌詞を用意していた。これには少々僕も驚いた。今までもケンが歌詞を書いた作品はあるが、まるで詞先で書いたかのように(実際は曲先だけど)すらっと歌詞を書いて出してきたのは、今まででも初めてだった。今の自分の気分や考えを、少しでも伝えたい気持ちがそういう行動になっているのかな、と思った。彼の書いた"Brake away"はそういう部分を一番色濃く出した楽曲だった。"MonkeyPresident"も、恐らく自分の事を言ったものだろう。どれも自分には書けない類のものだった。これらをまずはポーンと、バンドに投げつけてきたのだ。

YUには去年からの"Friday night"があった。これはサウンド面では間違いなく次のアルバムの指針になるものだったが、この段階では"新曲"に絞る事で見送られた。変わりに書かれた幾つかの曲はまたしてもほぼピアノとメロディのシンプルな曲が多かった。今、デモを聴き直してみても、YUの曲が最もデモと完成形が異なった形に変化している。跡形もないほどに形を変えてしまったのは、何を隠そうアレンジしている僕らだったりするのだが(笑)。

Akiyukiが用意した曲の中に、明らかに異質な曲が一つあった。今まで聞いたことのないようなサウンドとメロディ。決してキャッチーな、歌いやすい歌ではないのに一度聴くと何とも頭から離れなくなる…とにかく奇妙な曲だった。個人的には、この曲を聴いた瞬間に3rdアルバムの全体像が見えた、と言ってもいい(作曲した本人は絶対否定するだろうけど)。その曲が持っていたのは、単純に言えば"オリジナリティ"だった。僕自身はいつまでたってもこういう曲を書くことが出来ない。けれどもこういう雰囲気をもった楽曲を揃えた、強いオリジナリティを聴いた人に感じてもらえるアルバムを作りたい、と強く思った。この曲は一番最初のデモ出しの時から完成形まで、全くアレンジや雰囲気が変わっていない。変えようがない、と言った方が良いかも知れないのだが…デモの段階では歌詞がついていなかったが、僕は作詞の際に仮タイトルさえ変更しなかった。その曲は"NorwegianWood"というタイトルだった。

曲が出揃った時点で、迷う暇もなくアレンジが始った。僕とAkiyukiはマンションの一室のような小部屋に閉じこもって…それこそ人が2人も入れば窮屈なスペースだったので、4人であれこれ言いながら作業するのは難しかった。それでもアレンジ作業が滞ることはほとんどなかった。やっぱりここに来る前に壁の大部分は越えていたのかもしれない。「カッコいい感じのアルバム」というひどく漠然とした目標に向かって、それでも迷うことなくプリプロは続けられた。3月の半ば過ぎには、かなり完成形に近いものが僕らの手元にあった。春はすぐ傍まで近づいている感じだった。

アルバム作りの一番美味しく、一番苦しい部分がここから始ろうとしていた。



(続く)





(今日からHPでの視聴が始ったね。こっちも急いで書かないとな~発売日に間に合うのか??)
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