Third man running(3)
十月の末、バンドはようやく次のステップに向けて長野でのレコーディング合宿を行った。がしかし、ケンは体調不良により欠席。三人だけの山篭もりが始まった。


一曲でも多くの曲を仕上げてツアーに間に合わせる事が目的だったが、その合宿に向けてピックアップされたいくつかの曲の中に、YUの書いたピアノとメロディだけのシンプルな新曲があった。メロディのとても美しい、スローテンポなバラードだった。これをこのままバラードのアレンジをせずに、どうにか新しいバンドサウンドに出来ないか?という所からこの合宿が、引いては次の作品に向けたバンドの模索が始まったのだと今さらに思う。

この時期、バンドが望んでいたサウンドは、漠然とはしていたけれども、よりシンプルな、バンドのメンバーのみで演奏されるようなサウンドだった。オーバーダビングを極力減らし、ブラスやストリングス、パーカッションといった別の演奏者に頼るパートを廃するアレンジである。もともと2ndアルバムを作る際にもその傾向はあったのだが、長野ではさらにその傾向が強まる事になりそうだった。僕個人としては楽曲によってはキーボードさえ入れなくて良いと思っていた。ギミックの少ない、ロックなサウンドを一番望んでいたのは、恐らく僕自身だったのだと思う。

当然そういうサウンドで一番大事なのは、エッジの効いたRockGuitarである(笑)。がしかし、当の本人が作った曲はピアノのみのバラード。ここにまず最初の課題があった。


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話は逸れるが、LINDA LOUの場合、Guitarで作曲を行うのはアキユキ一人である。他のメンバーは皆、ギターをつまびく事はあっても根本的には鍵盤をベースにした発想で曲を作っている(と思う)。そのサウンドは必然的に、ハーモニーが低音から高音へと積まれた構築的なものになる傾向が強い(何故か?は説明するととっても大変なのだか)。こうやって作られた曲を崩してギターサウンドに置き換えるというのは中々に大変で、どうしてもLINDA LOUの楽曲は理路整然とした、破綻の少ないものになりやすい。それでは面白くないので色々ギミックや遊びを入れて作ったのが2ndアルバムだったりするのだ。

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合宿での環境の変化もあって、このピアノ曲のバンドアレンジは色々苦労しながらも上手く完成させることが出来た。ライブで演奏する事がまず前提にあったからかもしれないが、必要最低限の音のみで骨組まれたバンドのリズムにほんの少しだけキーボードを乗せて、各パートの顔がハッキリ見えるようなアレンジを目指したこの新曲は、始めに作られたYUのデモとは全く違うサウンドに変貌した。

この新曲には"FridayNight"というタイトルが付けられた。

僕は最初からキーボードを極力入れないというビジョンを持っていたが、それをAkiyukiとYUの二人が上手く解釈してくれたのが大きかったと思う。こんな風にメンバーだけであれこれやりとりしながらバンドアレンジを一から練ったのは、バンドを結成した一番最初の頃以来だったような気がする。

初めにこの曲が出来上がったことは、僕達のテンションを随分上向きにさせた。このまま一気に次回アルバムの大まかなイメージまで掴めるかな??という感じだったが、この後の作業は難航した。バンド演奏をシンプルなものにすればするほど個々の楽器の力強さが求められたし、かえって複雑な曲よりもアレンジの技術が必要だった。ライブで演奏するためのアレンジを作ることは可能でも、次の作品のイメージを固めるだけの曲を作り上げるには、まだまだ時間も実力も足りなかったと今になって思う。

結局の所、この合宿でバンドは冬のツアーで演奏する幾つかの曲を仕上げる事が出来たが、本格的なアルバムの製作にはまだ入ることが出来なかった。合宿でもしない限り、なかなかメンバー全員で集まる機会が作れないのもその原因の一つだった。実際の所、4人で合宿した事は今までにも一度もないわけだしね。

そんなうちに、時間だけはどんどんと経っていった。バンドのアレンジだけでなくその曲に歌詞をつける作業も残っていたし、それは相変わらず(多分これからも一生)孤独で長い時間だった。あっという間に年の暮れ、GenerationGapとの初めての2マンツアーが近づいていた。


(続く)

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